少し男らしい扱をなさいましな。私《わたくし》如き畜生とは違つて、貴方は立派な法学士」
「おお俺が法学士ならどうした」
「名実が相副《あひそ》はんと謂ふのです」
「生意気なもう一遍言つて見ろ」
「何遍でも言ひます。学士なら学士のやうな所業を為《な》さい」
 蒲田が腕《かひな》は電光の如く躍《をど》りて、猶言はんとせし貫一が胸先を諸掴《もろつかみ》に無図《むず》と捉《と》りたり。
「間、貴様は……」
 捩向《ねぢむ》けたる彼の面《おもて》を打目戍《うちまも》りて、
「取つて投げてくれやうと思ふほど憎い奴でも、かうして顔を見合せると、白い二本筋の帽子を冠《かぶ》つて煖炉《ストオブ》の前に膝を並べた時分の姿が目に附いて、嗚呼《ああ》、順《おとなし》い間を、と力抜《ちからぬけ》がして了ふ。貴様これが人情だぞ」
 鷹《たか》に遭《あ》へる小鳥の如く身動《みうごき》し得為《えせ》で押付けられたる貫一を、風早はさすがに憫然《あはれ》と見遣りて、
「蒲田の言ふ通りだ。僕等も中学に居た頃の間《はざま》と思つて、それは誓つて迷惑を掛けるやうな事は為んから、君も友人の誼《よしみ》を思つて、二人の頼を聴いてくれ
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