うもあります」
「然し気の毒だな、無利息、十個年賦《じつかねんぷ》は」
「ええ? 常談ぢやありません」
 さすがに彼の一本参りしを、蒲田は誇りかに嘲笑《せせらわらひ》しつ。
風「常談は措いて、いづれ四五日|内《うち》に篤《とく》と話を付けるから、今日のところは、久しぶりで会つた僕等の顔を立てて、何も言はずに帰つてくれ給へな」
「さう云ふ無理を有仰《おつしや》るで、私の方も然るべき御挨拶[#「然るべき御挨拶」に傍点]が出来なくなるのです。既に遊佐さんも御承諾なのですから、この手形はお貰ひ申して帰ります。未だ外《ほか》へ廻るで急ぎますから、お話は後日|寛《ゆつく》り伺ひませう。遊佐さん、御印を願ひますよ。貴方《あなた》御承諾なすつて置きながら今になつて遅々《ぐづぐづ》なすつては困ります」
蒲「疫病神《やくびようがみ》が戸惑《とまどひ》したやうに手形々々と煩《うるさ》い奴だ。俺《おれ》が始末をして遣らうよ」
 彼は遊佐が前なる用紙を取りて、
蒲「金壱百拾七円……何だ、百拾七円とは」
遊「百十七円? 九十円だよ」
蒲「金壱百拾七円とこの通り書いてある」
 かかる事は能《よ》く知りながら彼はわざ
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