も敵討《かたきうち》の門出《かどで》だ。互に交す茶盃《ちやさかづき》か」

     第 六 章

 座敷には窘《くるし》める遊佐と沈着《おちつ》きたる貫一と相対して、莨盆《たばこぼん》の火の消えんとすれど呼ばず、彼の傍《かたはら》に茶托《ちやたく》の上に伏せたる茶碗《ちやわん》は、嘗《かつ》て肺病患者と知らで出《いだ》せしを恐れて除物《のけもの》にしたりしをば、妻の取出してわざと用ゐたるなり。
 遊佐は憤《いきどほり》を忍べる声音《こわね》にて、
「それは出来んよ。勿論《もちろん》朋友《ほうゆう》は幾多《いくら》も有るけれど、書替の連帯を頼むやうな者は無いのだから。考へて見給へ、何《なん》ぼ朋友の中だと云つても外の事と違つて、借金の連帯は頼めないよ。さう無理を言つて困らせんでも可いぢやないか」
 貫一の声は重きを曳《ひ》くが如く底強く沈みたり。
「敢《あへ》て困らせるの、何のと云ふ訳ではありません。利は下さらず、書替は出来んと、それでは私《わたくし》の方が立ちません。何方《どちら》とも今日は是非願はんければならんのでございます。連帯と云つたところで、固《もと》より貴方《あなた》がお引
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