ざいます。あんな強慾な事を致すものは全く人相が別でございます。それは可厭《いや》に陰気な※[#「※」は「韋+(仞−イ)」、151−1]々《ねちねち》した、底意地の悪さうな、本当に探偵小説にでも在りさうな奴でございますよ」
急足《いそぎあし》に階子《はしご》を鳴して昇り来りし蒲田は、
「おいおい風早、不思議、不思議」
と上端《あがりはな》に坐れる妻の背後《うしろ》を過《すぐ》るとて絶《したた》かその足を蹈付《ふんづ》けたり。
「これは失礼を。お痛うございましたらう。どうも失礼を」
骨身に沁《し》みて痛かりけるを妻は赤くなりて推怺《おしこら》へつつ、さり気無く挨拶《あいさつ》せるを、風早は見かねたりけん、
「不相変《あひかはらず》麁相《そそつ》かしいね、蒲田は」
「どうぞ御免を。つい慌《あわ》てたものだから……」
「何をそんなに慌てるのさ」
「落付《おちつか》れる訳のものではないよ。下に来てゐる高利貸《アイス》と云ふのは、誰《たれ》だと思ふ」
「君のと同し奴かい」
「人様の居る前で君の[#「君の」に傍点]とは怪しからんぢやないか」
「これは失礼」
「僕は妻君の足を蹈んだのだが、君は僕
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