の面《つら》を蹈んだ」
「でも仕合《しあはせ》と皮の厚いところで」
「怪《け》しからん!」
 妻の足の痛《いたみ》は忽《たちま》ち下腹に転《うつ》りて、彼は得堪へず笑ふなりけり。
風「常談どころぢやない、下では苦しんでゐる人があるのだ」
蒲「その苦しめてゐる奴だ、不思議ぢやないか、間だよ、あの間貫一だよ」
 敵寄すると聞きけんやうに風早は身構へて、
「間貫一、学校に居た?!」
「さう! 驚いたらう」
 彼は長き鼻息を出して、空《むなし》く眼《まなこ》を※[#「※」は「目+登」、152−8]《みは》りしが、
「本当かい」
「まあ、見て来たまへ」
 別して呆《あき》れたるは主《あるじ》の妻なり。彼は鈍《おぞ》ましからず胸の跳《をど》るを覚えぬ。同じ思は二人が面《おもて》にも顕《あらは》るるを見るべし。
「下に参つてゐるのは御朋友《ごほうゆう》なのでございますか」
 蒲田は忙《せは》しげに頷《うなづ》きて、
「さうです。我々と高等中学の同級に居つた男なのですよ」
「まあ!」
「夙《かね》て学校を罷《や》めてから高利貸《アイス》を遣つてゐると云ふ話は聞いてゐましたけれど、極温和《ごくおとなし》
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