なり》と蚊帳《かや》が捫択《もんちやく》してゐるやうなものだ」
風「ええ、自分がどれほど撞けるのだ」
蒲「さう、多度《たんと》も行かんが、天狗《てんぐ》の風早に二十遣るのさ」
二人は劣らじと諍《あらが》ひし末、直《ただち》に一番の勝負をいざいざと手薬煉《てぐすね》引きかくるを、遊佐は引分けて、
「それは飲んでからに為やう。夜が長いから後で寛《ゆつく》り出来るさ。帰つて風呂にでも入《い》つて、それから徐々《そろそろ》始めやうよ」
往来繁《ゆききしげ》き町を湯屋の角より入《い》れば、道幅その二分の一ばかりなる横町の物売る店も雑《まじ》りながら閑静に、家並《やなみ》整へる中程に店蔵《みせぐら》の質店《しちや》と軒ラムプの並びて、格子木戸《こうしきど》の内を庭がかりにしたる門《かど》に楪葉《ゆづりは》の立てるぞ遊佐が居住《すまひ》なる。
彼は二人を導きて内格子を開きける時、彼の美き妻は出《い》で来《きた》りて、伴へる客あるを見て稍《やや》打惑へる気色《けしき》なりしが、遽《にはか》に笑《ゑみ》を含みて常の如く迎へたり。
「さあ、どうぞお二階へ」
「座敷は?」と夫に尤《とが》められて、彼は
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