《おやぢ》がさう言つてゐた、風早さんが後曳を三度なさると新いチョオクが半分|失《なくな》る……」
蒲「穿得《うがちえ》て妙だ」
風「チョオクの多少は業《わざ》の巧拙には関せんよ。遊佐が無闇《むやみ》に杖《キュウ》を取易《とりか》へるのだつて、決して見《み》とも好くはない」
 蒲田は手もて遽《にはか》に制しつ。
「もう、それで可い。他《ひと》の非を挙げるやうな者に業《わざ》の出来た例《ためし》が無い。悲い哉《かな》君達の球も蒲田に八十で底止《とまり》だね」
風「八十の事があるものか」
蒲「それでは幾箇《いくつ》で来るのだ」
「八十五よ」
「五とは情無い! 心の程も知られける哉《かな》だ」
「何でも可いから一ゲエム行かう」
「行かうとは何だ! 願ひますと言ふものだ」
 語《ことば》も訖《をは》らざるに彼は傍腹《ひばら》に不意の肱突《ひぢつき》を吃《くら》ひぬ。
「あ、痛《いた》! さう強く撞《つ》くから毎々球が滾《ころ》げ出すのだ。風早の球は暴《あら》いから癇癪玉《かんしやくだま》と謂ふのだし、遊佐のは馬鹿に柔《やはらか》いから蒟蒻玉《こんにやくだま》。それで、二人の撞くところは電公《かみ
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