蒲「それは結構だ。さう泊《とまり》が知れて見ると急ぐにも当らんから、どうだね、一ゲエム。君はこの頃風早と対《たい》に成つたさうだが、長足の進歩ぢやないか。然《しか》し、どうもその長足のちやう[#「ちやう」に傍点]はてう[#「てう」に傍点](貂)足らず、続《つ》ぐにフロックを以つて為るのぢやないかい。この頃は全然《すつかり》フロックが止《とま》つた? ははははは[#「ははははは」に傍点]、それはお目出度《めでた》いやうな御愁傷のやうな妙な次第だね。然し、フロックが止つたのは明《あきらか》に一段の進境を示すものだ。まあ、それで大分話せるやうになりました」
 風早は例の皺嗄声《しわかれごゑ》して大笑《たいしよう》を発せり。
風「更に一段の進境を示すには、竪杖《たてキュウ》をして二寸三分クロオスを裂《やぶ》かなければ可けません」
蒲「三たび臂《ひぢ》を折つて良医となるさ。あれから僕は竪杖《たてキュウ》の極意を悟つたのだ」
風「へへへ、この頃の僕の後曳《あとびき》の手際《てぎは》も知らんで」
 これを聞きて、こたびは遊佐が笑へり。
遊「君の後曳も口ほどではないよ。この間|那処《あすこ》の主翁
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