すといへども、彼は約の如く下水の倍量をばその鮮血に搾《しぼ》りその活肉に割きて以て返さざるべからず。噫《ああ》、世間の最も不敵なる者高利を貸して、これを借《か》るは更に最も不敵なる者と為さざらんや。ここを以《も》て、高利は借《か》るべき人これを借りて始めて用ゐるべし。さらずばこれを借るの覚悟あるべきを要す。これ風早法学士の高利貸に対する意見の概要なり。遊佐は実にこの人にあらず、又この覚悟とても有らざるを、奇禍に罹《かか》れる哉《かな》と、彼は人の為ながら常にこの憂《うれひ》を解く能《あた》はざりき。
近きに郷友会《きようゆうかい》の秋季大会あらんとて、今日委員会のありし帰《かへる》さを彼等は三人《みたり》打連れて、遊佐が家へ向へるなり。
「別に御馳走《ごちそう》と云つては無いけれど、松茸《まつだけ》の極新《ごくあたらし》いのと、製造元から貰《もら》つた黒麦酒《くろビイル》が有るからね、鶏《とり》でも買つて、寛《ゆつく》り話さうぢやないか」
遊佐が弄《まさぐ》れる半月形の熏豚《ハム》の罐詰《かんづめ》も、この設《まうけ》にとて途《みち》に求めしなり。
蒲田の声は朗々として聴くに快く
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