う》がございませう、あの傍《そば》へ些《ちよつ》とお出で下さいませんか。一枚|像《とら》して戴きたい」
写真機は既に好き処に据ゑられたるなり。子爵は庭に下立《おりた》ちて、早くもカメラの覆《おほひ》を引被《ひきかつ》ぎ、かれこれ位置を取りなどして、
「さあ、光線の具合が妙だ!」
いでや、事の様《よう》を見んとて、慢々《ゆらゆら》と出来《いできた》れるは富山唯継なり。片手には葉巻《シガア》の半《なかば》燻《くゆ》りしを撮《つま》み、片臂《かたひぢ》を五紋の単羽織《ひとへはおり》の袖《そで》の内に張りて、鼻の下の延びて見ゆるやうの笑《ゑみ》を浮べつつ、
「ああ、おまへ其処《そこ》に居らんければ可かんよ、何為《なぜ》歩いて来るのかね」
子爵の慌《あわ》てたる顔はこの時|毛繻子《けじゆす》の覆の内よりついと顕《あらは》れたり。
「可けない! 那処《あすこ》に居て下さらなければ可けませんな。何、御免を蒙《かうむ》る? ――可けない! お手間は取せませんから、どうぞ」
「いや、貴方《あなた》は巧い言《こと》をお覚えですな。お手間は取せませんは余程好い」
「この位に言つて願はんとね、近頃は写し
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