と睨《ね》めて動かざる眼《まなこ》には見る見る涙を湛《たた》へて、唯|一攫《ひとつかみ》にもせまほしく肉の躍《をど》るを推怺《おしこら》へつつ、窃《ひそか》に歯咬《はがみ》をなしたり。可懐《なつか》しさと可恐《おそろ》しさと可耻《はづか》しさとを取集めたる宮が胸の内は何に喩《たと》へんやうも無く、あはれ、人目だにあらずば抱付《いだきつ》きても思ふままに苛《さいな》まれんをと、心のみは憧《あこが》れながら身を如何《いかに》とも為難《しがた》ければ、せめてこの誠は通ぜよかしと、見る目に思を籠《こ》むるより外はあらず。
貫一はつと踏出して始の如く足疾《あしばや》に過行けり。宮は附人《つきひと》に面を背《そむ》けて、唇《くちびる》を咬《か》みつつ歩めり。驚きに驚かされし静緒は何事とも弁《わきま》へねど、推《すい》すべきほどには推して、事の秘密なるを思へば、賓《まらうど》の顔色のさしも常ならず変りて可悩《なやま》しげなるを、問出でんも可《よし》や否《あし》やを料《はか》りかねて、唯|可慎《つつまし》う引添ひて行くのみなりしが、漸く庭口に来にける時、
「大相お顔色がお悪くてゐらつしやいますが、お
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