|敢《あへ》て為にせんとにもあらざるべし。彼は常にその友を択べり。富山が交《まじは》るところは、その地位に於《おい》て、その名声に於て、その家柄に於て、或《あるひ》はその資産に於て、孰《いづれ》の一つか取るべき者ならざれば決して取らざりき。されば彼の友とするところは、それらの一つを以て優に彼以上に価する人士にあらざるは無し。実《げ》に彼は美き友を有《も》てるなり。さりとて彼は未《いま》だ曾《かつ》てその友を利用せし事などあらざれば、こたびも強《あながち》に有福なる華族を利用せんとにはあらで、友として美き人なれば、かく勉《つと》めて交《まじはり》は求むるならん。故《ゆゑ》に彼はその名簿の中に一箇《いつか》の憂《うれひ》を同《おなじ》うすべき友をだに見出《みいだ》さざるを知れり。抑《そもそ》も友とは楽《たのしみ》を共にせんが為の友にして、若《も》し憂を同うせんとには、別に金銭《マネイ》ありて、人の助を用ゐず、又決して用ゐるに足らずと信じたり。彼の美き友を択ぶは固《もと》よりこの理に外ならず、寔《まこと》に彼の択べる友は皆美けれども、尽《ことごと》くこれ酒肉の兄弟《けいてい》たるのみ。知らず
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