ざいますか。何でもこの位の眼鏡は西洋にも多度《たんと》御座いませんさうで、招魂社《しようこんしや》のお祭の時などは、狼煙《のろし》の人形が能《よ》く見えるのでございます。私はこれを見まする度《たび》にさやう思ひますのでございますが、かう云う風に話が聞えましたらさぞ宜《よろし》うございませう。余《あんま》り近くに見えますので、音や声なんぞが致すかと想ふやうでございます」
「音が聞えたら、彼方此方《あちこち》の音が一所に成つて粉雑《ごちやごちや》になつて了《しま》ひませう」
かく言ひて斉《ひとし》く笑へり。静緒は客遇《きやくあしらひ》に慣れたれば、可羞《はづか》しげに見えながらも話を求むるには拙《つたな》からざりき。
「私は始めてこれを見せて戴《いただ》きました折、殿様に全然《すつかり》騙《だま》されましたのでございます。鼻の前《さき》に見えるだらうと仰せられますから、さやうにございますと申上げますと、見えたら直《すぐ》にその眼鏡を耳に推付《おつつ》けて見ろ、早くさへ耳に推付《おつつ》ければ、音でも声でも聞えると仰せられますので……」
淀無《よどみな》く語出《かたりい》づる静緒の顔を見
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