み》の念強けれど、妬《ねた》しとは及び難くて、静緒は心に畏《おそ》るるなるべし。
 彼は貴婦人の貌《かたち》に耽《ふけ》りて、その※[#「※」は「肄−聿+欠」、126−5]待《もてなし》にとて携へ来つる双眼鏡を参らするをば気着かでゐたり。こは殿の仏蘭西《フランス》より持ち帰られし名器なるを、漸《やうや》く取出《とりいだ》して薦《すす》めたり。形は一握《いちあく》の中に隠るるばかりなれど、能《よ》く遠くを望み得る力はほとほと神助と疑ふべく、筒は乳白色の玉《ぎよく》もて造られ、僅《わづか》に黄金《きん》細工の金具を施したるのみ。
 やがて双眼鏡は貴婦人の手に在りて、措《お》くを忘らるるまでに愛《め》でられけるが、目の及ばぬ遠き限は南に北に眺尽《ながめつく》されて、彼はこの鏡《グラス》の凡《ただ》ならず精巧なるに驚ける状《さま》なり。
「那処《あすこ》に遠く些《ほん》の小楊枝《こようじ》ほどの棒が見えませう、あれが旗なので、浅黄《あさぎ》に赤い柳条《しま》の模様まで昭然《はつきり》見えて、さうして旗竿《はたさを》の頭《さき》に鳶《とび》が宿《とま》つてゐるが手に取るやう」
「おや、さやうでご
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