向聞きません。成程、ああ云ふ風ですから、それはさうかも知れません」
「外の人にはこんな話は出来ません。長年気心も知り合つて家内《うち》の人も同《おんな》じのお前さんの事だから、私もお話を為るのですけれどね、困つた事が出来て了つたの――どうしたら可からうかと思つてね」
お峯がナイフを執れる手は漸《やうや》く鈍くなりぬ。
「おや、これは大変な虫だ。こら、御覧なさい。この虫はどうでせう」
「非常ですな」
「虫が付いちや可けません! 栗には限らず」
「さうです」
お峯は又一つ取りて剥《む》き始めけるが、心進まざらんやうにナイフの運《はこび》は愈《いよい》よ等閑《なほざり》なりき。
「これは本当にお前さんだから私は信仰して話を為るのですけれど、此処《ここ》きりの話ですからね」
「承知しました」
貫一は食はんとせし栗を持ち直して、屹《き》とお峯に打向ひたり。聞く耳もあらずと知れど、秘密を語らんとする彼の声は自《おのづ》から潜《ひそま》りぬ。
「どうも私はこの間から異《をかし》いわいと思つてゐたのですが、どうも様子がね、内の夫《ひと》があの別品さんに係合《かかりあひ》を付けてゐやしないかと思ふ
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