しや[#「べいろしや」に傍点]組の方ですよ。金銭《かね》が有るから為ないと限つたものですか。さう云ふ噂が私の耳へ入つてゐるのですもの」
「はて、な」
「あれ、そんな剥きやうをしちや食べるところは無い、此方《こつち》へお貸しなさい」
「これは憚様《はばかりさま》です」
お峯はその言はんとするところを言はんとには、墨々《まじまじ》と手を束《つか》ねて在らんより、事に紛らしつつ語るの便《たより》あるを思へるなり。彼は更に栗の大いなるを択《えら》みて、その頂《いただき》よりナイフを加へつ。
「些《ちよい》と見たつてそんな事を為さうな風ぢやありませんか。お前さんなんぞは堅人《かたじん》だから可いけれど、本当にあんな者に係合《かかりあ》ひでもしたら大変ですよ」
「さう云ふ事が有りますかな」
「だつて、私の耳へさへ入る位なのに、お前さんが万更知らない事は無からうと思ひますがね。あの別品さんがそれを遣《や》ると云ふのは評判ですよ。金窪《かなくぼ》さん、鷲爪《わしづめ》さん、それから芥原《あくたはら》さん、皆《みんな》その話をしてゐましたよ」
「或《あるひ》はそんな評判があるのかも知れませんが、私は一
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