はんと云ふのは二の次で、私はその失望以来この世の中が嫌《きらひ》で、総《すべ》ての人間を好まんのですから」
「それでは誠も誠も――命懸けて貴方を思ふ者がございましても?」
「勿論! 別して惚《ほ》れたの、思ふのと云ふ事は大嫌です」
「あの、命を懸けて慕つてゐるといふのがお了解《わかり》になりましても」
「高利貸の目には涙は無いですよ」
今は取付く島も無くて、満枝は暫《しば》し惘然《ぼうぜん》としてゐたり。
「どうぞ御飯を頂戴」
打萎《うちしを》れつつ満枝は飯《めし》を盛りて出《いだ》せり。
「これは恐入ります」
彼は啖《くら》ふこと傍《かたはら》に人無き若《ごと》し。満枝の面《おもて》は薄紅《うすくれなゐ》になほ酔《ゑひ》は有りながら、酔《よ》へる体《てい》も無くて、唯打案じたり。
「貴方も上りませんか」
かく会釈して貫一は三盃目《さんばいめ》を易《か》へつ。やや有りて、
「間さん」と、呼れし時、彼は満口に飯を啣《ふく》みて遽《にはか》に応《こた》ふる能《あた》はず、唯目を挙《あ》げて女の顔を見たるのみ。
「私もこんな事を口に出しますまでには、もしや貴方が御承知の無い時には、と
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