すさ、何を苦んでこんな極悪非道な、白日《はくじつ》盗《とう》を為《な》すと謂《い》はうか、病人の喉口《のどくち》を干《ほ》すと謂《い》はうか、命よりは大事な人の名誉を殺して、その金銭を奪取る高利貸などを択《えら》むものですか」
聴居る満枝は益《ますま》す酔《ゑひ》を冷されぬ。
「不正な家業と謂ふよりは、もう悪事ですな。それを私が今日《こんにち》始めて知つたのではない、知つて身を堕《おと》したのは、私は当時|敵手《さき》を殺して自分も死にたかつたくらゐ無念|極《きはま》る失望をした事があつたからです。その失望と云ふのは、私が人を頼《たのみ》にしてをつた事があつて、その人達も頼れなければならん義理合になつてをつたのを、不図した慾に誘れて、約束は違へる、義理は捨てる、さうして私は見事に売られたのです」
火影《ひかげ》を避けんとしたる彼の目の中に遽《にはか》に耀《かがや》けるは、なほ新《あらた》なる痛恨の涙の浮べるなり。
「実に頼少《たのみすくな》い世の中で、その義理も人情も忘れて、罪も無い私の売られたのも、原《もと》はと云へば、金銭《かね》からです。仮初《かりそめ》にも一匹《いつぴき》の
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