お察し下さいましな。私だつて何時までも赤樫《あかがし》に居たいことは無いぢやございませんか。さう云ふ訳なのでございます」
「全然《さつぱり》解らんですな」
「貴方、可うございますよ」
可恨《うらめ》しげに満枝は言《ことば》を絶ちて、横膝《よこひざ》に莨を拈《ひね》りゐたり。
「失礼ですけれど、私はお先へ御飯を戴きます」
貫一が飯桶《めしつぎ》を引寄せんとするを、はたと抑《おさ》へて、
「お給仕なれば私致します」
「それは憚様《はばかりさま》です」
満枝は飯桶を我が側に取寄せしが、茶椀《ちやわん》をそれに伏せて、彼方《あなた》の壁際《かべぎは》に推遣《おしや》りたり。
「未だお早うございますよ。もうお一盞召上れ」
「もう頭が痛くて克《かな》はんですから赦《ゆる》して下さい。腹が空いてゐるのですから」
「お餒《ひもじ》いところを御飯を上げませんでは、さぞお辛《つら》うございませう」
「知れた事ですわ」
「さうでございませう。それなら、此方《こちら》で思つてゐることが全《まる》で先方《さき》へ通らなかつたら、餒いのに御飯を食べないのよりか夐《はるか》に辛うございますよ。そんなにお餒じけ
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