的に装《よそほ》へるに反して、黒紬《くろつむぎ》の紋付の羽織に藍千筋《あゐせんすぢ》の秩父銘撰《ちちぶめいせん》の袷着て、白縮緬《しろちりめん》の兵児帯《へこおび》も新《あたらし》からず。
 彼を識《し》れりし者は定めて見咎《みとが》むべし、彼の面影《おもかげ》は尠《すくな》からず変りぬ。愛らしかりしところは皆|失《う》せて、四年《よとせ》に余る悲酸と憂苦と相結びて常に解けざる色は、自《おのづか》ら暗き陰を成してその面《おもて》を蔽《おほ》へり。撓《たゆ》むとも折るべからざる堅忍の気は、沈鬱せる顔色《がんしよく》の表に動けども、嘗《かつ》て宮を見しやうの優き光は再びその眼《まなこ》に輝かずなりぬ。見ることの冷《ひややか》に、言ふことの謹《つつし》めるは、彼が近来の特質にして、人はこれが為に狎《な》るるを憚《はばか》れば、自《みづから》もまた苟《いやしく》も親みを求めざるほどに、同業者は誰《たれ》も誰も偏人として彼を遠《とほざ》けぬ。焉《いづく》んぞ知らん、貫一が心には、さしもの恋を失ひし身のいかで狂人たらざりしかを怪《あやし》むなりけり。
 彼は色を正して、満枝が独り興に乗じて盃《さか
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