せて有るところがクレオパトラよ。然し、壮《さかん》な女だな」
「余り壮なのは恐れる」
 佐分利は頭《かしら》を抑《おさ》へて後様《うしろさま》に靠《もた》れつつ笑ひぬ。次いで一同も笑ひぬ。
 佐分利は二年生たりしより既に高利の大火坑に堕《お》ちて、今はしも連帯一判、取交《とりま》ぜ五口《いつくち》の債務六百四十何円の呵責《かしやく》に膏《あぶら》を取《とら》るる身の上にぞありける。次いでは甘糟の四百円、大島紬氏は卒業前にして百五十円、後《ご》に又二百円、無疵《むきず》なるは風早と荒尾とのみ。
 ※[#「※」は「さんずい+氣」、86−9]車は神奈川に着きぬ。彼等の物語をば笑《ゑま》しげに傍聴したりし横浜|商人体《しようにんてい》の乗客は、幸《さいはひ》に無聊《ぶりよう》を慰められしを謝すらんやうに、懇《ねんごろ》に一揖《いつゆう》してここに下車せり。暫《しばら》く話の絶えける間《ひま》に荒尾は何をか打案ずる体《てい》にて、その目を空《むなし》く見据ゑつつ漫語《そぞろごと》のやうに言出《いひい》でたり。
「その後|誰《たれ》も間《はざま》の事を聞かんかね」
「間貫一かい」と皺嗄声《しわかれ
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