ごゑ》は問反《とひかへ》せり。
「おお、誰やらぢやつたね、高利貸《アイス》の才取《さいとり》とか、手代《てだい》とかしてをると言うたのは」
蒲「さうさう、そんな話を聞いたつけね。然し、間には高利貸《アイス》の才取は出来ない。あれは高利を貸すべく余り多くの涙を有つてゐるのだ」
我が意を得つと謂《い》はんやうに荒尾は頷《うなづ》きて、猶《なほ》も思に沈みゐたり。佐分利と甘糟の二人はその頃一級|先《さきだ》ちてありければ、間とは相識らざるなりき。
荒「高利貸《アイス》と云ふのはどうも妄《うそ》ぢやらう。全く余り多くの涙を有つてをる。惜い事をした、得難い才子ぢやつたものね。あれが今居らうなら……」
彼は忍びやかに太息《ためいき》を泄《もら》せり。
「君達は今逢うても顔を見忘れはすまいな」
風「それは覚えてゐるとも。あれの峭然《ぴん》と外眥《めじり》の昂《あが》つた所が目標《めじるし》さ」
蒲「さうして髪《あたま》の癖毛《くせつけ》の具合がな、愛嬌《あいきよう》が有つたぢやないか。デスクの上に頬杖《ほほづゑ》を抂《つ》いて、かう下向になつて何時《いつ》でも真面目《まじめ》に講義を聴いてゐたと
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