ゐ》を啜《すす》り、ハヴァナの紫を吹きて、佐分利は徐《おもむろ》に語《ことば》を継ぐ、
「所謂《いはゆる》一朶《いちだ》の梨花海棠《りかかいどう》を圧してからに、娘の満枝は自由にされて了《しま》つた訳だ。これは無論親父には内証だつたのだが、当座は荐《しき》つて帰りたがつた娘が、後には親父の方から帰れ帰れ言つても、帰らんだらう。その内に段々様子が知れたもので、侍|形気《かたぎ》の親父は非常な立腹だ。子でない、親でないと云ふ騒になつたね。すると禿《はげ》の方から、妾だから不承知なのだらう、籍を入れて本妻に直すからくれろといふ談判になつた。それで逢つて見ると娘も、阿父《おとつ》さん、どうか承知して下さいは、親父|益《ますま》す意外の益す不服だ。けれども、天魔に魅入られたものと親父も愛相《あいそ》を尽《つか》して、唯《ただ》一人の娘を阿父さん彼自身より十歳《とを》ばかりも老漢《おやぢ》の高利貸にくれて了つたのだ。それから満枝は益す禿の寵《ちよう》を得て、内政を自由にするやうになつたから、定めて生家《さと》の方へ貢《みつ》ぐと思の外、極《きめ》の給《もの》の外は塵葉《ちりつぱ》一本|饋《や》らん
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