まぜかへし》に、深沈なる荒尾も已《や》むを得ざらんやうに破顔しつ。
「その赤樫と云ふ奴は貸金の督促を利用しては女を弄《もてあそ》ぶのが道楽で、此奴《こいつ》の為に汚《けが》された者は随分意外の辺《へん》にも在るさうな。そこで今の『美人《びじ》クリイム』、これもその手に罹《かか》つたので、原《もと》は貧乏士族の娘で堅気であつたのだが、老猾《おやぢ》この娘を見ると食指大いに動いた訳で、これを俘《とりこ》にしたさに父親に少しばかりの金を貸したのだ。期限が来ても返せん、それを何とも言はずに、後から後からと三四度も貸して置いて、もう好い時分に、内に手が無くて困るから、半月ばかり仲働《なかばたらき》に貸してくれと言出した。これはよしんば奴の胸中が見え透いてゐたからとて、勢ひ辞《ことわ》りかねる人情だらう。今から六年ばかり前の事で、娘が十九の年|老猾《おやぢ》は六十ばかりの禿顱《はげあたま》の事だから、まさかに色気とは想はんわね。そこで内へ引張つて来て口説いたのだ。女房といふ者は無いので、怪しげな爨妾然《たきざはりぜん》たる女を置いてをつたのが、その内にいつか娘は妾同様になつたのはどうだい!」
 固
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