行方《ゆくへ》知れずになつて了つたと……」
宮はやにはに蹶起《はねお》きて、立たんと為れば脚の痛《いたみ》に脆《もろ》くも倒れて効無《かひな》きを、漸《やうや》く這寄《はひよ》りて貫一の脚に縋付《すがりつ》き、声と涙とを争ひて、
「貫一さん、ま……ま……待つて下さい。貴方《あなた》これから何《ど》……何処《どこ》へ行くのよ」
貫一はさすがに驚けり、宮が衣《きぬ》の披《はだ》けて雪《ゆき》可羞《はづかし》く露《あらは》せる膝頭《ひざがしら》は、夥《おびただし》く血に染みて顫ふなりき。
「や、怪我《けが》をしたか」
寄らんとするを宮は支へて、
「ええ、こんな事はかまはないから、貴方は何処へ行くのよ、話があるから今夜は一所に帰つて下さい、よう、貫一さん、後生だから」
「話が有《あ》ればここで聞かう」
「ここぢや私は可厭《いや》よ」
「ええ、何の話が有るものか。さあここを放さないか」
「私は放さない」
「剛情張ると蹴飛《けとば》すぞ」
「蹴られても可いわ」
貫一は力を極《きは》めて振断《ふりちぎ》れば、宮は無残に伏転《ふしまろ》びぬ。
「貫一さん」
「貫一ははや幾間を急行《いそぎゆ》き
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