さま》に転《まろ》びしが、なかなか声をも立てず苦痛を忍びて、彼はそのまま砂の上に泣伏したり。貫一は猛獣などを撃ちたるやうに、彼の身動も得為《えせ》ず弱々《よわよわ》と僵《たふ》れたるを、なほ憎さげに見遣《みや》りつつ、
「宮、おのれ、おのれ姦婦、やい! 貴様のな、心変をしたばかりに間貫一の男|一匹《いつぴき》はな、失望の極発狂して、大事の一生を誤つて了《しま》ふのだ。学問も何ももう廃《やめ》だ。この恨の為に貫一は生きながら悪魔になつて、貴様のやうな畜生の肉を啖《くら》つて遣る覚悟だ。富山の令……令夫……令夫人! もう一生お目には掛らんから、その顔を挙げて、真人間で居る内の貫一の面《つら》を好く見て置かないかい。長々の御恩に預つた翁《をぢ》さん姨《をば》さんには一目会つて段々の御礼を申上げなければ済まんのでありますけれど、仔細《しさい》あつて貫一はこのまま長の御暇《おいとま》を致しますから、随分お達者で御機嫌《ごきげん》よろしう……宮《みい》さん、お前から好くさう言つておくれ、よ、若《も》し貫一はどうしたとお訊《たづ》ねなすつたら、あの大馬鹿者は一月十七日の晩に気が違つて、熱海の浜辺から
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