粒か二十粒に過ぎんのぢやないか。よしんばあの財産がお前の自由になるとしたところで、女の身に何十万と云ふ金がどうなる、何十万の金を女の身で面白く費《つか》へるかい。雀に一俵の米を一度に食へと云ふやうなものぢやないか。男を持たなければ女の身は立てないものなら、一生の苦楽他人に頼《よ》るで、女の宝とするのはその夫ではないか。何百万の財《かね》が有らうと、その夫が宝と為るに足らんものであつたら、女の心細さは、なかなか車に載せて花見に連れられる車夫の女房には及ばんぢやあるまいか。
 聞けばあの富山の父と云ふものは、内に二人|外《おもて》に三人も妾を置いてゐると云ふ話だ。財の有る者は大方そんな真似《まね》をして、妻は些《ほん》の床の置物にされて、謂《い》はば棄てられてゐるのだ。棄てられてゐながらその愛されてゐる妾よりは、責任も重く、苦労も多く、苦《くるしみ》ばかりで楽《たのしみ》は無いと謂つて可い。お前の嫁《ゆ》く唯継だつて、固《もと》より所望《のぞみ》でお前を迎《もら》ふのだから、当座は随分愛しも為るだらうが、それが長く続くものか、財《かね》が有るから好きな真似も出来る、他《ほか》の楽《たのしみ
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