な者に見込れて、さぞ御迷惑ではゐらつしやいませうけれども私がこれ程までに思つてゐると云ふ事は、貴方も御存《ごぞんじ》でゐらつしやいませう。私が熱心に貴方の事を思つてゐると云ふ事で御座います、それはお了解《わかり》に成つてゐるで御座いませう」
「さうですな……そりや或《あるひ》はさうかも知れませんけれど……」
「何を言つてゐらつしやるのですね、貴方は、或《あるひ》はもさうかもないでは御座いませんか! さも無ければ、私何も貴方に※[#「※」は「勞/心」、375−4]《うるさ》がられる訳は御座いませんさ、貴方も私を※[#「※」は「勞/心」、375−4]《うるさ》いと思召すのが、現に何よりの証拠で。漆膠《しつこ》くて困ると御迷惑してゐらつしやるほど、承知を遊ばしてお在《いで》のでは御座いませんか」
「それはさう謂へばそんなものです」
「貴方から嫌はれ抜いてゐるにも関《かかは》らず、こんなに私が思つてゐると云ふ事は、十分御承知なので御座いませう」
「さう」
「で、私|従来《これまで》に色々申上げた事が御座いましたけれど、些《ちよつ》とでもお聴き遊ばしては下さいませんでした。それは表面の理窟《りくつ》から申せば、無理なお願かも知れませんけれど、私は又私で別に考へるところが有つて、決《け》して貴方の有仰《おつしや》るやうな道に外《はづ》れた事とは思ひませんのです。よしんばさうでありましても、こればかりは外の事とは別で、お互にかうと思つた日には、其処《そこ》に理窟も何も有るのでは御座いません。究竟《つまり》貴方がそれを口実にして遁《に》げてゐらつしやるのは、始から解り切つてゐるので。然し、貴方も人から偏屈だとか、一国だとか謂れてゐらつしやるのですから、成程|儀剛《ぎごは》な片意地なところもお有《あん》なすつて、色恋の事なんぞには貪着《とんちやく》を遊ばさん方で、それで私の心も汲分けては下さらんのかと、さうも又思つたり致して、実は貴方の頑固《がんこ》なのを私|歯痒《はがゆ》いやうに存じてをつたので御座います……ところが!」
と言ひも敢《あ》へず煙管《きせる》を取りて、彼は貫一の横膝《よこひざ》をば或る念力《ねんりき》強く痛《したた》か推したり。
「何を作《なさ》るのです!」
払へば取直すその煙管にて、手とも云はず、膝とも云はず、当るを幸《さいはひ》に満枝は又打ち被《かか》る。
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