うなラザルスさん。そうして又、お前さんは物凄いですね。死というものは、お前さんがふとしたおりに彼の手に落ちた日だけその手を休めてはいませんでした。しかしお前さんは実に頑丈ですね。一体あの偉大なるシーザーが言ったように、肥った人間には悪意などのあるものではありません。それであるから、なぜ人々がお前さんをそんなに恐れているのか、私には判らないのです。どうでしょう、今夜わたしをお前さんの家へ泊めてくれませんか。もう日が暮れて、私には泊まる処がないのですが……。」と、そのローマ人は金色の鎖をいじりながら静かに言った。
今までに誰ひとりとして、ラザルスを宿のあるじと頼もうとした者はなかった。
「わたしには寝床がありません。」と、ラザルスは言った。
「私はこれでも武士の端くれであったから、坐っていても眠られます。ただ私たちは火さえあれば結構です。」と、ローマ人は答えた。
「わたしの家《うち》には火もありません。」
「それでは、暗やみのなかで、友達のように語り明かしましょう。酒のひと壜ぐらいはお持ちでしょうから。」
「わたしには酒もありません。」
ローマ人は笑った。
「なるほど、やっと私にも判り
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