ました。なぜお前さんがそんなに暗い顔をして自分の再生を厭うかということが……。酒がないからでしょう。では、まあ仕方がないから、酒なしで語り明かそうではありませんか。話というものはファレルニアンの葡萄酒よりも、よほど人を酔わせると言いますから。」
合図をして、奴隷を遠ざけて、彼はラザルスと二人ぎりになった。そこで再びこのローマの彫刻家は談話を始めたのであったが、太陽が沈んで行くにつれて、彼の言葉にも生気を失って来たらしく、だんだんに力なく、空虚になって、疲労と酒糟《さけかす》に酔ったようにしどろもどろになって、言葉と言葉とのあいだに大空間と大暗黒とを暗示したような黒い割け目を生じた。
「さあ、わたしはお前さんのお客であるから、お前さんはお客に親切にしてくれるでしょうね。客を款待するということは、たとい三日間あの世に行っていた人たちでも当然の義務ですよ。噂によると、三日も墓の中で死んでいたそうですね。墓の中は冷たいに相違ない。そこでその以来、火も酒もなしで暮らすなどという悪い習慣が付いたのですね、私としては大いに火を愛しますね――なにしろ急に暗くなって来ましたからな。お前さんの眉毛と額の
前へ
次へ
全42ページ中21ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
アンドレーエフ レオニード・ニコラーエヴィチ の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング