るのだ。自分の運命を自分の手でよくなしてゆくことが、人間の一番大切な仕事なのだ。[#「なのだ。」は底本では「なのだ」]
よいか、ケメトスや、お前はあまりよくない運命を荷《にな》ってるようだから、それをよくなそうと努めなければいけない。さもないと、お前の終わりはきっと悪い。わかったか、ケメトスや」
ケメトスは何とも答えないで、ただうなずいてみせました。お祖父さんのようすがいつになく極めて真剣なのに、すっかり気圧《けお》されてしまっていました。
けれどもケメトスには、お祖父さんの言ったことがよくわかりませんでした。ただ、自分の生まれた時に星が流れたということだけが、はっきり頭にはいりました。そしてそのことを考えると、何だか嬉《うれ》しいような力強いような気がしました。
それから彼は、晩になるとよく星を眺《なが》めました。ことに、屋根の上にあがって、林檎《りんご》やなんかをかじりながら、星を見るのが愉快でした。ぴかっと光って長い尾を引いて、空の奥へ消えてゆく流れ星を見つけると、喜んで飛び上がりました。
「自分もあんなに空が飛べたら……」と彼は考えました。
しかし空を飛ぶのは容易なこ
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