彗星の話
豊島与志雄
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)片田舎《かたいなか》に
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)十|尺《しゃく》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#「なのだ。」は底本では「なのだ」]
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一
むかし、ギリシャの片田舎《かたいなか》に、ケメトスという人がいました。小さい時に両親《ふたおや》を失って、お祖父《じい》さんの手で育てられていましたが、非常な乱暴者で、近所の子供達と喧嘩《けんか》をしたり、他人の果樹園に忍び込んで、林檎《りんご》や無花果《いちじく》の実を盗んだり、野山を駆け廻ったりして、その日その日を遊び暮らしていました。
お祖父さんは非常に心配して、いろいろ言い聞かせましたけれど、ケメトスは耳にも入れませんでした。
空に星がいっぱい輝いてるある晩、お祖父さんが庭を歩いていますと、上から石ころみたいなものが飛んできて、すぐ前に落ちました。拾い上げてみると、それは大きな林檎でした。お祖父さんはびっくりして、林檎が飛んできた方を仰ぎ見ました。すると、そこの屋根の上
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