祭ってあったものなら、新たに祭り直しても構わないし、ついては、どういう人か知らないが、村尾さんのお友だちとかいうその人にも立ち会って貰いたいが、その代り、樹の切株のことや、地蔵さんのことには、うちでは一切関係しない、とそう言うのでした。
 分譲地の人たちの方でも、反対者を除いて、地所の祓い浄めをしてみようということになりました。だんだん調べてみると、切株の樹が茂っていた昔、その枝で縊死を遂げた女人があった由でした。
 そして、相良家の稲荷さんは、新たに祭り直されました。A女は無理に頼まれ、名前は匿して、古い御堂の開扉の役をしましたが、中を調べてみますと、それは珍らしく、女夫稲荷だったのです。
 地所の祓い浄めは、適当な人に頼んで、簡単になされました。
 さて、地蔵さんのことですが、その地所の所有者は遠くに住んでいましたので、問い合せてみますと、地所は売りに出してありますし、地蔵さんは適宜に処置してほしい、との返答でした。なお、先方の言葉によりますと、あの地蔵さんは、たしか、祖母がどこからか拾ってきたもので、それ以来、うちの事業がたいへん繁昌したと、伝え聞いてるそうでした。
 地蔵といっ
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