敷から、道路を距てた、焼跡の草むらの中に、約四尺ほどの小さな石の地蔵が、ぽつんと立っていました。
 さて、三つのものは発見されましたが、それをどうしたらよいか、村尾さんは尋ねました。
 A女は最初に念を押しました。
「申しておきますが、御病人たちは、医療を怠りなさってはいけませんよ。それを充分になさらないと、どうにもなりません。わたくしの方のことは、霊界のことで、謂わば科学の蔭にかくれたことです。医療を充分になさりながら、これをなさると、宜しいんですけれど……さあ、どうですかねえ、なかなかむつかしいかも知れませんね。」
 お稲荷さんを新たにお祭りすること――これは相良家にして貰えばよろしい。樹の切株のあった場所をお祓いして浄めること――これは神官でも僧侶でも行者でもよいが、然るべき人に頼んで、皆さんでなさればよろしい。お地蔵さんを新たにお祭りして世に出してあげること――これも然るべき人に頼んで、皆さんでなさればよろしい。以上の三つで、至極簡単なことのようでした。
 村尾さんはもうすっかりA女の言うことを信じていましたから、早速、今井さんのところへ行って、夫婦に事の次第をうち明け、実行に
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