。建築をするため、地ならしをする時、切株は取り除かれたのでした。
 A女はその話を注意深く聞き終ってから、小首を傾げました。
「それだけですか。」
「ええ、二つとも確かにありましたわ。」
「も一つある筈ですがねえ。」
「どんなものですの。」
「なにか、捨て去られたもののようです。」
「それでは、も一度行って調べてみましょう。」
 村尾さんはしみじみとA女の顔を見守りました。
「でも、まったくふしぎねえ、あなたにどうしてそんなことがお分りになりますの。」
 A女はさりげなく笑いました。
「じつは、いくらか信仰の道にはいったことがありまして、今も修業は続けておりますが、なかなか思うようには参りません。ただ、申しておきますが、わたくしは、普通の行者とか占い師とか、この頃はやりの新興宗教の人とか、そういうのとは少しく違いますからね……。だから、というわけではありませんが、わたくしのこと、ほかの人には漏らさないで下さいね、お願いしますよ。」
 村尾さんは一挙に言い伏せられたような風で、もう何も言いませんでした。
 それから三日後、村尾さんの報告によりますと、第三のものも見出されました。相良家の屋
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