、おかしいわね。」
「いえ、わたくしが信じてるというのじゃありませんよ。ただ、ちょっと気になることがあって、それからだんだん聞いてみると、どうもへんなんですのよ。」
「へんなこと、つまり理外の理というのでしょうか、世の中にはたくさんありますわ。」
「それがねえ……。」
村尾さんはちょっと考えこんで、頭の中を整理するらしく、そして話しました。
村尾さんの娘の嫁入先のことです。
相良家の広い屋敷が、戦時中の空襲のため灰燼に帰し、その一部に相良家は自邸を新築し、残りの土地を分譲しまして、そこに六軒のこじんまりした家が建ちました。そのうちの一軒が、村尾さんの婿の今井さんの家です。
今井さんは、自分の家を建てるに当って、丹念に設計図を吟味しまして、迷信家ではありませんけれど、鬼門とか裏鬼門とかその他の方位についても、よろしくないとされてる世間的通念は避けたのでした。
そして家が出来上ると、田舎の方にいた母親を引取りました。その母親が、軽い脳溢血で寝込みました。これはやがて快方に向いましたが、今度は、女の児が耳の病気で病院にはいりました。これもやがて恢復しましたが、次には、妻が胸を病んで
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