泊めようと思って、機会を狙っていました。おとなしいわりに胸幅の厚い所を見ると、屹度骨の節々がくるくると太いに違いありませんし、一度一寸突っついた所では、頬辺にみっちりみがはいって、その上もちゃもちゃっとした柔かさです。私はその子を一晩抱いて寝てやりたくなりました。するうちに、とうとう或る日の夕方、まだ薄日がさしていましたからそう遅くもなかったようですが、その子が一人で根津様の門の前に立って、鳩に餌をやってるのを見付けました。私は静に寄っていって、そっと肩に手をかけて、面白い物を見せてあげるからいらっしゃい、と云ってみました。子供はきょとんとして、私の顔を不思議そうに見上げました。で私はその手を取って、いい子ですねとか何とか云って、あやしながら歩き出そうとすると、ふいに大きな声で泣き出してしまったんです。私の方が喫驚しましたよ。その上すぐに、何処からかいつもの女中が馳け出してきて、何をなさるんです、とけたたましい声で私を叱りつけて、力一杯に突きのけたものです。私は本当に驚きましたが、その驚きが静まって、にこにこ笑っていますと、女中は子供を連れて、向うへ走っていってしまいました。それきり、
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