バレーをやったり、絵の展覧会だの、芝居だの……何でもやるんですって。」
「一体どんな人が集るの。」
 洋子は記憶にある名前を挙げはじめました。敏子が知ってるのも少しはありましたが、たいていは知らないのばかりでした。
 名前がとぎれた頃、洋子は俄に眼をくるりとさせました。
「まだあるわ。あたしもあなたも知ってる人よ。若いけれど、天才的な詩人ですって。保科哲夫さん……覚えていて。」
 敏子は眼を見張って、肩を引きしめました。
「田舎にいる時、温泉に来ていた学生さんよ。ソリに乗って遊んだじゃないの。」
「覚えてるわ。」
 それだけを、敏子は漸く言いました。
 それから洋子は、その団体のことをまた話し続けました。それを敏子は黙って聞いていてから、やがて尋ねました。
「あたしも、その会合を見に来ていいかしら。」
「ええ、いらっしゃいよ。うちのビルが会場で、あたしはそのお手伝いをしているんだから、大丈夫よ。ただ、会員にはなれないわよ。聞いていたら、あれもいけない、これもいけないって、大変な厳選らしいの。それでも、百人近くの会員ですって。何から何まで変梃なのよ。でもきっと面白いわ。」
「ではお頼みす
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