、その珍らしい物というのは。」
「この世にまたとない珍らしい物です。実は、この滝壺は竜宮に通じております。わたくしを許して下さったら、竜宮の膳椀を持って来て差上げます。明朝までに、必ず持って来て差上げます。」
「うむ、きっとだね。約束を被ったら、承知しないぞ。」
「はい。明朝来て下さい。」
 それで、馬方は河童をはなしてやり、河童は滝壺の底へもぐってゆきました。
 翌朝、馬方が滝壺のふちにやって来ますと、河童は約束通り、滝壺から出て来て、竜宮の膳椀を一揃い、馬方にくれました。
 その、竜宮の膳椀というのが、現在まで伝わってるのである。所有者は、滝の近村に住む星野某。拝観希望者は、若干の金を寄進することによって、いつでも見せて貰うことが出来る。まったく、稀代の珍品だそうである。
 こうなると、話そのものまで、下卑てくるばかりでなく、嘘らしくなってくる。もともと、竜宮の話などは虚構なものには違いないが、現実的な要素が加わってくればくるほど嘘らしくなるのは、妙なものだ。文学についても同様なことが言える。虚構のなかに真実があり、実録のなかに嘘が多い。
      *
 海中には、竜宮ではないが
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