けない。
憤激の余り私は右のように考えた。然しこの決心は如何に根の浅いものであったか! 私は頭で到達した帰結に満足して、それを胸の奥に移し植えるだけの労を取らなかったのである。
二日間、私達は互に口を利かなかった。その間私は、一方では秀子に対する憤りを無理に自ら煽り立てながら、一方では秀子が我を折ってくるのを待ちあぐんでいた。
二日目の夕方――その日は冷たい雨が午後から降り出していた――私は、まだ電灯もつかないのに、秀子が縁側の雨戸を閉めているのを見た。室の中が真暗になりそうだった。
「もう少し開けとおき!」と私は尖り声で云った。
「みさ[#「みさ」に傍点]子が風邪をひくじゃありませんか。暗くても温い方がよござんす。」と彼女は答えた。
私が枕を投って壊した障子の硝子は、まだそのままになっていた。私への見せしめか知らないが、彼女は新たに硝子屋へ頼むこともせず、または紙をはって一時の間に合わせることもしなかった。ぽかりと口を開いてる四角な穴からは、冷かな空気が流れ込んでくるようだった。
「硝子をはめさしたらいいじゃないか。」と私は云ってやった。
秀子は何とも答えないで、雨戸を閉め
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