年余になる細君を――亡くしたのとが、殆んど同じ頃だった。その両方の混雑にまぎれて、親しく往き来してた二人ではあるがいつしか疎遠になっていた。
武田の顔は、目立って色艶が悪く、頬の肉が落ちていた。
「飯は?」
「もう済んだ。」
「もう……。何なら、今初めたばかりだから、一緒にやろうか。」
「いやほんとに済んだよ。」
だが、佐野には腑に落ちなかった。どこをどうという理由もないが、武田はまだ食事をしていないに違いないという感じが、しきりにするのだった。
「ほんとかい。」
「ああほんとだ。」
武田は頑として冷い顔をしていた。
佐野は食事を続け、武田はビールを飲んだ。
「行こう行こうと思ってて、つい行きそびれちゃってね……。」
「いやお互様だよ。……君んとこは皆丈夫かい。」
「ああ丈夫だ。」
「二人とも……。」
「二人とも、……うむ、丈夫にしてるよ。」
敏子の顔が、ちらと佐野の頭に映った。と同時に、擽ったいような変な気持になった。
「君も……もう落付いたかい。」
「落付いたと云やあ、落付きすぎたくらいだが……。」
「そりゃあいい。」そして佐野はじっと武田の顔を眺めた。「細君に死なれるっ
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