探し求めずにはいられなくなる。街路《まち》を通ってる女達の顔を、一々覗き込んでることがある。自分でも知らず識らずにだよ。気がついてみると……。」
武田は眉根に深い皺を刻んで、老人のような額をしていた。
「それじゃあ、少し遊んでみるといいんだよ。」
「ばかな、そんな真剣な道楽が出来るものか。ただ酒だけはよく飲むが、露骨な肉体は堪らない。」
「露骨な肉体……。」
「そうじゃないのか、君は……。」
「僕の……。そんなんじゃないよ。ただ……。」
佐野は言葉につまった。そうだともそうでないとも云えない気がした。
「鬢附油の匂いなんて、そうじゃないのか。」
「単なる匂いさ。それに、僕はそう遊んでやしないよ。」
「そうかも知れないがね……。」
「いや本当だ、誤解しちゃ困る。あの晩は、どうも話の調子が変だったものだから……。」
「いや……君に逢ってよかった。……度々やって来て、邪魔じゃないか。」
「度々って、まだ……二度きりで……。」
「うん、これからのことさ。」
「いやちっとも……。気が向いたら、毎日でもいいよ。」
「毎日は来ないがね。……実際、君んところの赤ん坊はいい。僕はあれから、どんな赤ん
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