ないよ。」と中江はいやにしつこかった。「ヨタさんと大いに違うってことさ。」
「どこがちがって?」
「全く違う。」
「何がちがうのよ。」
「男が違うんだ。」
「まあ変なことを仰言るわね。……お杯頂戴。」
 千代次は立て続けにひっかけた。そして杯を中江の方にさしつけた。
「さあ、どこがちがうのよ。」
「どこもここも、世の中がみんな間違ってるんだ。」
 中江はもう何のことか分らなくなってたらしい。単に両手をついて、とろんとした眼で千代次を見ていた。その態度が、千代次の気に障ったらしかった。頬が一層蒼ざめてきた。しきりに酒を飲んだ。
「そんなことを仰言るなら、あたしにだって云い分はあるわよ。ひとを馬鹿にしてるわ。ヨタさんが何なの。お客だから、大事にしているだけよ。どんな人だって、お客なら、大事にするのが商売よ。」
「浮気もね。」
「そうでしょうとも、どこかの、女給さんたちなら……。あたしは、そんな好き嫌いなんか、ちっとも持ってやしないんだから。男なんて、みんな同じじゃないの、浮気なんか、ばかばかしくって……。」
「なんだって……情人《いろ》とか恋人《こい》とかのことを云ってるんじゃないよ。」

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