には千代ぼう、甘い話には千代ちゃんと、言葉の使い分けをする。彼女に対して君としか云ったことのない僕には、それらの呼び方が妬ましく聞える。が彼女には平気らしい。ヨタさんという綽名で依田に受け応えしている。ヨタさんと云われる度に、彼は得意げに微笑する。その微笑が僕の心を刺す[#「刺す」は底本では「剌す」]。卓の上には寄せ鍋が煮立っているが、床の間の青銅の鉢には、霧藻のかかった松の枝が寒そうにくねっている。その霧藻や白い苔を見つめていると、山奥の冷たい空気が胸に伝わる。佗びしいのだ。それが自分のことだか千代次のことだか分らない。そして何度か立上ろうとしたが、腰が動かない。酔ってもいないようだ。どうした、気球ロボット先生、と依田が声をかける。彼は気球ロボットの由来を話しているのだ。今日の『釣り女』は面白かった、気球ロボット先生の天女釣りと一ついこうじゃないか、なんかと、千代次とふく子の手を執って立上りながら、踊りの真似ごとをやりだそうとする。三味線が足りない、も一人呼んでくれ……。彼も酔っているらしい。僕も、踊るぞと立上った拍子に、ぞっと寒気《さむけ》がして、そのまま階段を降りて行った。帰るつ
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