包を、千代次が開けてみると、赤い革の楊子入だ。いつも楊子を持ってたためしがないじゃないか、不用意な奴だな。そして依田ははっはっは……と笑っている。
 そうなると、僕もやけに腰を落付けてしまった。やって来たふく子は僕には初めてのおとなしい妓だったし、依田が得意に与太をとばしてるので、千代次もふく子もその方にもって行かれて、僕は黙って酒をのむことが出来た。スピードをはやめて飲んだ。その僕の飲みっぷりを見やって、依田はふと首を傾げる。何を考えてるのか、不気味な存在だ。短く刈りこんだ硬い頭髪、裸になったら所々に黒子や痣がありそうな肥った胴体、贅肉のあり余った頬、皮膚の厚ぼったい手先、穏かな自己満足の眼付……一見したところ好人物らしいが、その重量のなかに非常な貪慾が潜んでいる。もうだいぶ酔ってきて、血液の多量を示す赤味を帯びている。血液の多量は貪慾の証拠だ。その方から眼を外らして、僕は煙草と酒とに頼ろうとした。自分の存在が彼の存在に気圧されて仕方がない。僕としてはダイヤか真珠しか買ってやれない気がしている千代次に、彼は戯れにせよ楊子入なんか買ってやって平然と笑っている。酒の時には千代次、冗談の時
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