た。僕の会社の社長で、毎日顔を見てるんだと。その僕の顔付と調子が、余りに真剣だか或は余りに頓馬だかだったろう、彼女は眼でびっくりしてみせて口元で笑った。そして、よく来て下すったわね、有難いわ、と云った。それが皮肉でも何でもないんだ。僕はぽかんとして、彼女の後について場内にはいった。彼女は僕の側を離れなかった。立ち通してしまった。踊が一段すむと、もうおしまいだ。立去るしおを失ってぐずついてるうちに、依田につかまって、自動車に乗ることになった。そうなると、多少の好奇心も湧くものだ。
 五時前なのに、冬の日はもう沈みかけていた。依田と僕と千代次と、待合の女将らしい六十年配の女との、四人だ。自動車のなかは寒くて薄ぼんやりしている。依田と女将だけに饒舌らしておいて、僕は執拗に黙っていた。着いたのは、同じ土地ではあるが、喜久本よりは大きな家の立派な室だ。室内はもう暖めてあった。それでも、酒だ、食事だ、ふく子か初枝か若いのを一人、洋服と褞袍の着換え、などと依田は忙しかった。そして席に落付いたかと思うと、また立ち上って洋服のポケットを探ってきた。これ、今日の出来栄えのお祝いだ。その、差出された小さな紙
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