ほう、君も来ていたのか。これは愉快だ。はっはっはっ……。」
 眼を細くして、本当に愉快そうな笑い方だ。僕は一寸口が利けなかった。がそれよりもなお吃驚したことは、裾模様に丸帯をしめた見馴れない姿の千代次が、彼――依田賢造――の横合から、今日は、とだしぬけに挨拶した。その眼が複雑にちらちら光った。依田の眼はこんどは円くなって、僕達を見比べた。なんだ二人とも知ってるのか、これは更に愉快だ。そしてはっはっは……という笑いだ。千代次の顔はもう人形のように澄し返って、横を向いて煙草をふかしている。僕は額に汗をかいた。依田は一切無頓着だった。平素は注意深い彼だが、その日はよほどうっかりしてたに違いない、或は心驕ってたに違いない。愉快だ、と繰返すんだ。こういう保養があれば、君の病後も安心だ。誰と来てるんだ。連れがなければ、是非今晩つき合ってくれ。約束したんだ、いいか。そしてその約束を僕に押しつけてしまった。僕はよほどそのまま帰ってしまおうかと思った。がお義理に、依田のあとから場内にはいりかけると、千代次は僕の袖を引張って、依田を先に通し人波を距ててから、よく御存じなんですかと聞く。僕は卒直に答えてやっ
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