る。この木の下にウマヅラハギを泳がしてみたら、面白かろう。
*
青島の救済院には多くの孤児が収容されている。この救済院の囲壁に、小さな穴があいていて、夜になるとそこで、院内の室から往来へ箱の口が開かれる。箱の中に子供の泣声がすると、室内の者がこれを聞きつけ、箱をひっこめ、中から子供を取出して、それを院に収容する。この仕方によって、捨児する者は人に顔を見られることなくして、児を救済院に委託することが出来る。人情を加味した合理的な処置であろう。
モダーンなハイカラな青島の都市にも、捨児をする者や貰子をする者がいくらもあるそうである。
*
支那の一般大衆は概して、幼時には相貌が美しく、長ずるに従って人相が悪くなる、という定評である。女はこれが殊に甚だしく、十七八歳までの美人は頗る多いが、二十歳を越す頃からとたんにお婆さんになり、所謂年増美とか姥桜とかは全くないと云われる。然し例外がないでもない。
青島の平庚五里は遊里であるが、ここの或る房の芸妓の、或は母親ともいい或は阿媽ともいうのが、良人の死後長く独身でいる四十歳をすぎた美人である。
平庚五里は特殊な大建築
前へ
次へ
全12ページ中2ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
豊島 与志雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング