北支点描
豊島与志雄
−−
【テキスト中に現れる記号について】
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「木+舌」、第3水準1−85−63]
−−
青島水族館は全く名ばかりのちっぽけなものであるが、ここの硝子の水槽のなかに、ウマヅラハギというおかしな魚が一匹いる。長さ二十センチあまりのものだが、長めの菱形で、頭が見ようによっては馬の横顔に似ている。こいつが身体も尾鰭もしゃちこばらして、頭を上に尾を下に縦に浮いて、じっと天の一角を眺めている。いつまでもじっとして大真面目でいるので、見ているとこちらが可笑しくなる。北京の中央公園で飼育されてるさまざまの奇怪豪華な金魚も、この一匹のウマヅラハギの姿態には及ばない。
北京の北海公園には、※[#「木+舌」、第3水準1−85−63]という一本の木がある。山東の山にいくらもある木だそうだが、白樺の幹に松の枝葉をくっつけたもので、如何にもふざけている。白い幹に緑の針葉でつっ立って威張ってるので、見ていると、人をばかにするなと云ってやりたくな
次へ
全12ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
豊島 与志雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング