―一つのことが頭に引っかかってきた。彼は云った。
「僕はいくら考えても分らない、話を聞いても分らない、まるで謎みたいな気がするが……実際僕には謎のように思えるんだ。」
「どんな謎?」
「宮原さんと君との関係さ。」
「あらいやよ、関係だなんて。ただのお友達……先生と……お弟子といったような間じゃありませんか。」
「今じゃないよ。あの時……宮原さんが奥さんと別れた時に……。」
「だって、宮原さんには二人もお子さんがおありなさるでしょう。」
「それだけの理由で?」
「ええ、それだけよ。」
 が彼女はその時ふいに、耳まで真赤になった。昌作は驚いてその顔を見つめた。けれど次の瞬間には、彼女はまた元の清澄な平静さに返っていた。彼は恥かしくなった。そして泣きたいような気持になった。
「もうそんな話は止そう。」と彼は呟いた。
「ええ、何か面白い話をしましょうよ。……そう、私春子さんを呼んでくるわ。私ね、あの人に何もかも話すことにしてるの。あの人と宮原さんが、私の一番親しいお友達よ。……そりゃあ気の毒なほんとにいい人なのよ。」
 そう云いながら彼女は立上った。昌作はぼんやりその後姿を見送った。極めて善良
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